「花秘める君のメテオール」珠森ベティ先生ロングインタビュー前編

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  • 珠森ベティ先生が贈る大人気作品「花秘める君のメテオール」。ひたむきでまっすぐな少女と呪いによってすべてを諦めた吸血鬼、ふたりが織りなす切なくも美しい愛と呪いの物語は多くのファンを魅了し、いよいよ5月15日(金)にはコミックス第6巻が発売となる。

    この美しく繊細な世界はいかにして生み出されたのか、前後編におよぶ珠森先生のロングインタビューを通して、その魅力を掘り下げていく。

    取材・文/まいたけ

    最初に見つけたのは、ステラとラビの関係性でした

    ―――珠森先生はデビュー作の「ねぇ一色くん、私のこと好きでしょう?(以下:一色くん)」から引き続き、「花秘める君のメテオール(以下:花メテ)」でも大変人気を博していらっしゃいますが、先生はもともと漫画家になりたいとお考えだったのでしょうか?

    珠森ベティ先生(以下、珠森)もともと絵を描くことは大好きでしたが、漫画家になろうとは考えていなくて。才能か、突出した技術が必要な世界で食べていくのは私には厳しいだろうし、自分は趣味で描くのが合ってるのだろうと、漠然と思っていたんです。でもやっぱり憧れはあったので、編集部さんからご連絡をいただいたときは本当に嬉しかったですし、担当編集の方もすごく素敵なお人柄で、ぜひ一緒にお仕事をしたいと思わせてくださって。私にできるならやってみたいなと思い、覚悟を持って漫画家の世界に飛び込ませていただきました。

    「ねぇ一色くん、私のこと好きでしょう?」書影

    先生のデビュー作「ねぇ一色くん、私のこと好きでしょう?」。30歳目前に恋人の浮気により破局した和花は、彼女に真っ直ぐな想いを向ける年下の青年・一色 蓮と出会う。初めは年下の彼は恋愛対象外だったものの、次第に心惹かれていき……。

    ――漫画家になってから生活面や精神面といった部分で、何か変化はありましたか?

    珠森精神面で言うと、物事をより深く考えるようになったと感じています。生活面では……じつは私には、小さな子どもが二人おりまして。家事や子育てをしながら、日々時間をかき集めて作業の時間をとっているという状況で、なかなかに大変です(苦笑)。

    ――育児と漫画連載の両立はすごく大変そうです。お子さんたちは、お母さんが漫画を描かれていることは知っているのでしょうか?

    珠森知っています!上の子はステラのイラストを描いてくれたりします。特に下の子はYouTubeの影響か吸血鬼が大好きで(笑)、ラビにすごく興味を持ってくれています。

    ――ほかに生活のルーティーンや漫画を描くにあたって、取り入れていることなどは何かあったりしますか?

    珠森ネーム以降は基本映画を垂れ流しながら作業をして、好きな映画は何度も何度も流しています。映画以外にも音楽を聞きながら作業することもあります。音楽を聞いている時は妄想の世界に入るので、手が止まることも多々ありますが(笑)。 そして漫画を書くにあたって取り入れていることは、自分の感情を深掘りして観察することです。良い感情だけでなく悪い感情を抱いた時も、「なぜ?」と自分に対して疑問を持つようにして、それを言葉にしてメモしています。あとは、日常の小さな幸せを見つけることです。空を見て足元を見て、ありふれたものの中から漫画に生かせるヒントを探しています。メモ帳にはポエムがいっぱいあります(笑)。

    ――映画もよくご覧になっているのですね。ちなみに影響を受けた作品を挙げるとしたら?

    珠森特にギレルモ・デル・トロ監督には影響を受けていると感じています。私はデル・トロ監督の創る世界観が大好きで、すごく尊敬していまして、私も自分だけが持つ世界を見つけて、表現していきたいです。ティム・バートン監督、ジェームズ・キャメロン監督作品も好きで、「週刊少年ジャンプ」といった少年誌からも影響を受けていますし、ディズニーの映画も大好きです。いろいろな“好き”が合わさって、今の自分の世界を構築していると思っています。

    ――漫画を描かれる際、ストーリーはどのように考えていっているのでしょうか?

    珠森まずなんとなく設定や舞台を決めてから、イメージに合った世界を、音楽を聴きながら模索しています。音楽を聴くことで、自分の中にあるさまざまな世界が掘り起こされていって、いろいろなシーンが思い浮かんでいくんです。「花メテ」の場合、自分の癖(ヘキ)だなと感じるところを最初に見つけたんですよ。それがステラとラビ、二人の関係性でした。

    「花秘める君のメテオール」コミック画像
    ――「花メテ」に限らず、先生の作品はキャラクターたちのセリフ回しや心理描写が非常に魅力的ですが、漫画を描く際に大切にしていることは何でしょうか?

    珠森私の中にあるキャラクターたちの感情や空気感を、いかに読者の皆さんに伝えていけるかというのはすごく意識しています。漫画には明確な正解がないので難しいですが、演出、間を意識したり、コマ内にあるものはすべて世界観を形作るものと見て、いかに印象に残る絵を作るか、そしていかに無駄を削れるかを大切にしています。

    ――先生の漫画を拝見したときに、コマ割りというかストーリーの流れがすごく映像的だなと感じました。

    珠森まさにそれが私の表現したいものなんです! 先ほどお話ししたように私は映画が大好きなので、映画のような雰囲気を漫画で表現したいと思っていて。なので映像的だと感じていただけているのでしたら、すごく嬉しいです。

    ――ちなみにキャラクターたちのデザインは、どのように作り上げていったのでしょうか?

    珠森ステラのデザインは、一目見ただけでステラだと分かるようなものにしたくて。髪は耳のぴょこぴょこだったり、片方だけくるくるとなっていたり、パステルカラーのピンクとブルーの色味だったり……。あとはかわいいから…!(笑) 私の思う最上級のかわいい女の子です!ラビは儚げでありつつも男性的、逆三角形の上半身に腰は細く足をすらっと長く。全体を描かなくてもラビとわかるようにピアスとヒールブーツをデザインしています。

  • “自分の道を選択する”というのが本作のテーマです

    ――「花メテ」はどのような経緯で誕生したのでしょうか? 前作は現代モノでしたが、本作でファンタジーに挑戦しようと思ったのはなぜですか?

    珠森吸血鬼物が描きたかったからです。前作は現代もので、この世界に入った時は自分に何が合ってるのかわかってなかったんですけど、最近わかってきた気がします。ファンタジー難しいですがとっても楽しいです!!

    ――前作「一色くん」とは作画の面でも違いが大きく感じられて。「花メテ」はすごく線が細くて、繊細さのようなものが画に出ていると思いました。

    珠森一色くんの時よりは上達したからかも…!(笑) 本作では特に繊細さというのを大切にしています。物語やキャラクターたち――特にラビが繊細なイメージだったので、それを表現したいと思って、線にはすごくこだわっています。ただ、細すぎても駄目ですし、かといって今度は太すぎてイメージと違っちゃうこともあって……かなり細かく調整しながら作画していますね。そうしてこだわった原稿を、担当編集の方がたくさん褒めてくださるのが本当に支えになっています。

    ――本作に込めた想いや伝えたいと思ったメッセージについてお伺いできますか?

    珠森“自分の道を選択する”というのが、本作の根幹にあるテーマになっています。自分の人生は自分で道を決めて歩むもので、その力は誰しもが内に秘めていると私は思っています。嬉しい感情も悲しい感情も、他者と完全に共有することは本質的にはできない。だから生きていると、ふと孤独だと感じてしまう瞬間もあると思います。けれど、その中で出会う誰かの優しさや言葉が、確かに心を支えてくれることがある。どんな人生を選ぶか、自分の道に向き合うのは自分自身です。それでも、誰かの存在に救われる瞬間もある。「自分の人生に向き合うこと」と、「誰かと関わること」。その両方の中にある、小さな希望のようなものを描きたいと思いました。この作品が皆さんが大変な時に力になる、小さな光のような存在になれたらいいなと思いながら描いています。

    ――先生が込めた想いというのは前作「一色くん」からも感じられました。主人公の和花もステラと同じ芯を持っていますし、彼女が何気なく口にした言葉が周りの人たちを救っているというのも、共通しているなと。

    珠森私自身が、自分で選んだことは自分で責任を取りたいというタイプなんです。だから和花とステラにもそれが出ているのかなと。決して私=ステラというわけではなく、ステラという海の中に私の生き方や誠実でありたいという気持ち、信念を一滴落としているという感覚です。

    「花秘める君のメテオール」コミック画像

    和花もステラも自分の意志で道を選ぶというキャラクター。担当編集M曰く、珠森先生ご自身も普段からよく「自分で決めたことだから」と仰っているそう。

    ――先生の信念が、和花とステラのまっすぐさに繋がっているんですね。

    珠森そうですね。私の「常に誠実でありたい」という気持ちが、ステラのまっすぐさや素直さの源になっていると思います。でも私はステラの生き方を肯定はしていなくて。ステラってすごくいい子で思いやりがあって、ラビのことはもちろんほかの人のことも心から救いたいと思っています。でも人によって求めている優しさが違いますし、場合によっては彼女のような優しさは、逆に相手を傷つけてしまうこともあると思うんです。だからこそ私は彼女を全肯定はしませんし、無邪気なまっすぐさは時として、誰かにとってすごく息苦しくて厄介なものになるということを、絶対に忘れないでいたいです。これから物語が進む中で、ステラは自分の行動が必ずしもいい結果に繋がるわけではないということを身をもって学び、自分の行動について立ち止まって考えることもあると思います。でもきっとどんなことがあっても、ステラはまっすぐ。そんな彼女だからこそ、この物語の主人公は絶対にステラだけで、彼女にしかこの物語を終わらせることはできないのです。

    ――確かにステラの優しさはラビにとって大きな救いになっていますが、エリオス王太子にとっては現状受け入れ難いもののようですね。

    珠森エリオスもそうですけど、フィンにとってもステラのまっすぐさはあまり良いものではないんですよね。今後ステラが彼らとどう向き合っていくかというのも鍵になってきます。ステラと関わる=それぞれ自分と向き合うということでもあるので。ステラは自分の信念がエゴだと理解していてその責任を自分で取るとは言いつつも、他者に与える影響というのはまだわかっていないんです。いつか自分の選択の結果に悩む場面が来た時に、彼女がどう行動するのかを私は楽しみにしています。

    「花秘める君のメテオール」コミック画像

    ステラの瞳の中にある花は、彼女の心の中がたくさんの人からもらった優しさで、いっぱいになっていることを表現している。いま彼女は、ラビにその花の種を分けようとしているのだ。

  • 33話のラビのセリフを引き出すのに苦戦しました

    ――先ほどステラについてお話しいただいたので、次はラビについて伺えますか?

    珠森二次元限定の話ですが、私は男の子が苦しんだり傷ついたりする姿を見るのがたまらなく好きで。ラビは私の癖が特別に強くて、言ってしまえば私が好きな“弱さ”を持っている男の子なんですよ。大切に思っている女の子を自分が傷つけちゃって、そんな自分自身を憎んでもっと傷ついている……そういうキャラクターになっています。じつは物語において最初に浮かび上がってきたのは、起承転結の“転”にあたる部分でした。ここは物語が大きく動くところで、ラビの心の動きが一番重要になってきます。物語がこの“転”に辿り着いた時、読者の皆さんにラビの心の変化と彼がした選択、それによって湧き出る彼の感情に寄り添っていただけたらいいなと思い、今はそこに向けてラビの心の種まきをしている状況です。私が描きたい“転”に向けて、そして物語の終盤に向けて、ラビの感情を繊細に、丁寧に描いていきたいと思っています。

    ――ラビの感情を描くにあたり、一番難しかったシーンを挙げるとしたらどこでしょうか?

    珠森32話と33話です。特に33話はラビが本当に苦しい状況で……。ステラを傷つけてしまったことでラビは彼女から逃げてしまうんですが、なぜ彼がステラから逃げたのかという、より深い部分を描かないといけない場面でした。人は自分のことを、すべて理解しているわけではなくて、より深いところにも自分でさえ知らない自分というものが存在していると思っていて。ラビの深いところにも彼が知らない彼自身がいるので、彼を魅せるためには深い部分を探ることも必要なのです。最後の最後。この「臆病」という言葉。この言葉を引き出せたから33話が完成しました。すべてのキャラにいえることですが、その子の最も深いところを知ることによって、表現できる幅が広がってより読者さんにその子自身を伝えられるので、各キャラを深く理解するということに努めています。

    「花秘める君のメテオール」コミック画像

    暴走したラビは、吸血衝動によってステラを瀕死の状態へと追いやってしまう。何よりも守りたかった大切な存在を自らの手で傷つけてしまったことにラビは深く傷つき、ステラから逃げ出してしまう。そんなラビにステラは想いを告げ、彼を引き留める。

    ――直前の話数までふたりの関係は順風満帆といいますか、いい雰囲気だったじゃないですか。だから32話、33話あたりの温度差はすごく苦しくて、ラビのことを考えると読んでいて辛かったです。

    珠森ラビは選択肢がないキャラクターで、本当にずっと苦しいんですよね。彼が背負わされた運命は残酷なもので、彼はこれからも、それを身をもって実感し続けるんです。ラビは奪う側でステラは奪われる側。ステラを大切に思えば思うほど、その構図はラビにとって苦しいものになっていきます。33話でラビはステラから逃げてしまいましたが、私はそれでもいいと思っています。辛い時は逃げてもいいんですよ。でも、もし逃げた後に、まだ苦しいならいっそのこと戦った方が良い場合もあって。ラビはきっと戦わないといけない子。今展開している第2章はラビが自分と向き合っていく話でもあって、ステラやエリオス、そしてフィンと関わることで、ラビが何を選択するのかというのが見どころになっています。

    ――ちなみに先ほど起承転結の“転”に向けて……というお話がありましたが、現段階ではどの程度ストーリーが進んでいるのでしょうか?

    珠森今は中盤の手前くらいに差しかかっています。本作の結末は初めから決めてあって、私は毎日その結末に想いを馳せていて。結末にたどり着きたくて仕方がありませんが、永遠にこの作品を描いていたいという矛盾を抱える日々です。

    ――ありがとうございます。我々読者もラビに心を寄せつつ、この先の物語に想いを馳せていきたいと思います。
    【後編に続く】
  • 最新コミックス第6巻が5月15日(金)に発売!

    花秘める君のメテオール第6巻書影

    「狼殺し」の異名を持つ謎の男・フィンに導かれ、シャルルフェローへと向かう一行。その一方でステラは、ラビの甘やかな熱に日増しに彼への恋心を募らせていく。この気持ちを伝えることができたら、そのあとは――…。期待と不安に胸を膨らませながらも、ついにラビに想いを打ち明けようと決意をするが……?

  • イベント「花秘める君のメテオール展2026」が4月16日(木)より開催決定!

    4月16日(木)~5月11日(月)の期間限定で、アニメイト池袋本店 3階わくわくスペースにて「花秘める君のメテオール展2026」が開催。本イベントではさまざまな展示が用意されているほか、描きおろしイラストを使用したグッズが多数登場する。ぜひ足を運んで、「花メテ」の世界を楽しんでほしい。

    • 「花秘める君のメテオール展2026」 開催
    • 開催期間

      2026年4月16日(木)~5月11日(月)

      開催場所

      アニメイト池袋本店 3Fわくわくスペース

    アニメイトGratte第三弾 開催決定!

    • アニメイトGratte第三弾 開催決定!!
    • Gratte第三弾 メニュー
    • Gratte第三弾 プリントクッキー
    • Gratte第三弾 トレーディングカード アクリルスタンド
    • 開催期間

      2026年4月16日(木)~6月14日(日)

      ラテ・クッキー 販売店舗

      アニメイト池袋本店、秋葉原ANNEX、横浜ビブレ、名古屋、大阪日本橋、岡山

      ラテ・クッキー・アイス 販売店舗

      アニメイト渋谷、吉祥寺パルコ、仙台、梅田

    「花秘める君のメテオール」展2026&「花秘める君のメテオール」グラッテ第三弾&第6巻新刊発売記念連動キャンペーン

    「花秘める君のメテオール 6巻」の発売を記念して【花秘める君のメテオール展2026 in アニメイト池袋本店3F わくわくスペース】【花秘める君のメテオール グラッテ第三弾】の開催が決定!開催決定を記念して連動特典キャンペーンを開催いたします!

    • 連動キャンペーン
    • 開催期間

      2026年4月16日(木)~6月14日(日)

      開催場所

      全国アニメイト(通販を除く)